服部まゆみ先生 全短編集 「最後の楽園」
こんにちは。
最近はコロナウイルスの影響で様々なことがおきて、私の日常生活にも大きな悲しみの雨を降らしていますが、平日は在宅勤務で土日は外出自粛で部屋に引きこもっています。
部屋にひきこもる生活。私的には本当に最高!
土日だけですが、朝好きな時間に起きて食べてゴロゴロしながら本とかマンガ読んでTVで映画みたり、もう楽しいのなんのって感じです。積んでた未読本を読むいい機会ですね。
そんな私がようやく読み終わった作品
服部まゆみ先生 全短編集 「最後の楽園」
以前の記事にも先生の「この光と闇で」について書きましたが、
すっかり先生のファンの私は昨年11月頃にツイッターで流れてきた情報に驚愕。
既に鬼籍に入られている先生の全短編集が11月末に発売されると!!
あぁ、なんてこと!11月から1月まで、私は怒涛の繁忙期。。。
とりあえず発売時に本をゲットしたものの案の定読む暇もなく、、、
このコロナ騒動の中、私の心を癒してくれたのがこの作品でした。
今まで発表されてたものや未発表のものなど、短編17編が収録されています。
しかもカバーや章扉のイラストも服部先生の作品なんですよ。。。!
ミステリアスな雰囲気が作品にぴったりです。
棚に飾るだけでおしゃれだ・・・!!
内容ですが、現代が舞台のものから源氏物語の話、横溝正史の金田一耕助が登場するお話、果てはパニックホラー的なものまであります。
とにもかくにも、先生は平安時代のような和風テイストや中世ヨーロッパのようなゴシック風味など、なにを書かれても文章が上品で綺麗で書かれる情景がキラキラと私の頭の中に浮かび上がってくるんです。
登場人物についても善悪二元論では語れないような、何重もの面を持つ個性的な人物ばかりで、それがゆえに展開も読めないですし、気づけば感情移入してしまうんです。
読んでいる間はもう、シンガポールのラッフルズでアフタヌーンティーを味わったときの気持ちを思い出すようなひと時でした。。。
■やはりでてくる複雑な家族模様
第2節はまるまる「桜」という中編小説なのですが、家系図が載るような複雑な人間関係のとある家族のお話です。
先生はこういう一族もの的なお話をよく書かれるよなぁ。
やはりミステリだとこのように力ある一族で起きる殺人事件が舞台だったりしますが、先生の場合はミステリというよりも家族間のドラマのほうに焦点が当てられている気がします。もちろん、ミステリ要素もあるので最後の最後に「え?!」となるオチがあるのですが、それ以上に家族、いや男と女の情念的なものを徹底的に書いてるように感じます。。。
■才能ある父親とその息子、うら若き乙女・・・
この構図も多いと思います。
才能がありその分野で名声をもつ父親(芸術家や作家など)とその息子、息子は父親が連れてきた若い女性(弟子だったりファンだったり)に憧れるが実はその女性と父親は関係があり、なおかつその事に母親は気づいていて・・・
みたいなドロドロ構図が多い気がします。
しかしなぜが昼ドラの愛憎劇を見るときにドキドキ感、ではなく、どちらかというと見てはいけないものを覗き見るような気持ちになるんですよね。。。やっぱりこれも先生の文章によるものと、テーマに使われる音楽だったり文学だったりの装飾がそうさせているんでしょうか。。あと、昼ドラの登場人物のような覇気があまりない。笑
■多彩なモチーフ
最初に収録されている作品は古今東西様々なものがあるといいましたが、
作中でテーマやモチーフになる題材も多岐にわたっているのです!
絵画・文学・音楽についての掘り下げは今まで通り、今回は歌舞伎や人形を題材にしたものまであって、どれだけ芸術に対して造詣が深いんだ・・・!と感動しました。
歌舞伎を扱った小説なんて、オチが秀逸です。
そんなこんなで服部まゆみ先生の短編集を読みましたが、
落ち着いたころにもう一度読み返したいと思います。
↓ 以下ネタバレ入り感想です
■たまにとんでも要素がぶっこまれますよね?!
第1節に収録されている中編「時のかたち」はいつも通り繊細な男女が傷つけあったり、父親がからんできたり母親が多大な影響を与えていたり(よくある)してどうにかこうにか なるお話ですが、
終盤主人公が数十年ぶりに友人を訪ねてあった友人の父親が、実は友人の変装姿で友人は自分の父親に成り代わっていたんだ!という展開なのですが、
変装にあたっての服装やらなんやらはまあ納得できたのですが、声はヘリウムガス(作中ではスプレー缶の玩具とかいってますが)を使ったって、、、そんなことある??とほっこりしました。
「この闇と光の中で」でも男がダフネという女中のふりをしていたみたいな展開がありましたが・・・なんとなくほっこりします。