服部まゆみ先生「この闇と光」におぼれています
こんにちは。
服部まゆみ先生に溺れています。
どの作品も美しくて、悲しくて、しんどくて、なのに読み終わった後も頭から離れないストーリー、登場人物、台詞。。。
なんでもっと早く読まなかったのかと日々悔やんでいます。
「罪深き緑の夏」「シメール」「一八八八 切り裂きジャック」etc
ここ最近で一気に読みました。
そんな私が一番最初に読み、一番大好きな作品が「この闇と光」
角川文庫から出ているものなのですが、裏の紹介文には"至上の美を誇るゴシックミステリ"とあり、表紙もその雰囲気を醸し出しています。
ネタバレのない範囲で紹介すると、囚われの王女レイアとそのおとうさまかつ王様の2人の生活がしめやかに流れていきます。
レイアがおとうさまから童話からクラシック、様々な文化を享受しつつ育てられていくのですが、この豊かさがとにかく勉強になります。
私は地味に大学でドイツ文学部に所属しグリム童話や「デミアン」なんかを学んでいたため、そのあたりは自然に受け入れられたのですが、
絵画やクラシックに関しては全くの無知ですので、それこそ文章に出てきた絵画は画像検索、クラシック曲を都度youtubeで検索して聴きました(笑)。全くいい時代ですよね。
そのように様々な文学・音楽・芸術によって彩られているレイアとおとうさまの作品は本当に重厚で美しく、まさに"ゴシック"な物語なのです。
しかしミステリーであるのを忘れることなかれ。
読んでいる途中様々な引っ掛かりがあるのですが、物語終盤に衝撃的なことがおこります。
この衝撃は本当にすごいです。終盤叫ぶこと間違いなしです!
他にも、服部先生の全作品に共通しますが、とにかく文章が美しいのです。
レイアの言葉や考えを紡ぐ文章が美しく、情景描写も情緒溢れていて、
まさに"美文"とはこうなのだなと思います。
残念なことに服部先生が2007年に鬼籍に入られており、今後新しい作品を読むことができません。その事実を知った時ショック過ぎてふて寝しました。。
とにかく、私は服部先生の作品が大好きなのです。
宝物です。
↓以下ネタバレありの感想です。
私は何よりも、レイアとおとうさまの関係が本当に愛おしくて大好きです。
おとうさまは決して性的な目でレイアをみることはなく、ただひたすらに"美"を求め、それをレイアの中に見出し引き延ばしていったのかなと思いました。
服部先生のどの作品にも必ずと言っていいほど"美に囚われた人"が登場するのですが、それが先生の文章と作り出す世界にぴったりで、もうたまりません!!!
その人にとっては"美しいもの"がなによりも最優先。
「この闇と光」では、盲目のレイアにとって目が見えない暗闇のほうが世界は美しくあり、目が見えるようになってからのほうが汚濁にまみれ、汚らわしいと感じるという何とも悲しくも、世情を皮肉った展開だなと。
ところで私、最後の章「ムーンレイカー」が本当に好きすぎて、ここだけ何十回も読みました。
終わり方がもうタイトルとレイアの心の叫びとすべてを体現しているようで、、、
もはやレイアにとってレイアと同じ世界に生きる人はおとうさましかいないのですよ。
その世界においておとうさまはもはや神、、
おとうさまもレイアのことを徹底的に知らんふりするくせに、「君が何を言おうと、私は君が気に入りました。君もそうでしょう?レイア」とかいうあたり、レイアをからかっていますよこの人。
やっぱりおとうさまにとっても、おとうさまと同じ世界に生きているのはレイアしかいないのだなと、だからこそ「おとうさま・・・」とか言われたら口を噤んじゃうんですよね?
なんだか全然考察になっていない、やはり心の叫びになっていますが、
私は、「この闇と光」が、大好きなんです。